視覚障がい者のための歩行支援システム体験会の報告

姫路デジタルサポート
2023年3月11日

2月15日(水)歩行支援システムの体験会を行いました。参加者は、姫路、明石の視覚障がい者6人とガイドさんです。今回は行政の方も参加いただきました。神戸市のポートライナーの駅近辺で実証実験中の「NaviLens」「コード化点字ブロック」を、実際にiPhoneを使って利用してみました。

1 体験会の背景

視覚障がい者を対象にした、何種類もの歩行支援システムが新しく開発され、一部実用化もされています。また、新しい歩行補助アプリもリリースされようとしています。

一方、同行援護(ガイドヘルパー)制度が充実した今も視覚障がい者の間には「単独歩行をしたい」という願望は根強く、また、次世代に安全安心の歩行環境を残したいと多くの当事者が願っています。そこで、今回の体験会を計画しました。

2 概要

コード化点字ブロック(左)とナビレンズのコード(右)
コード化点字ブロック(左)とナビレンズのコード(右)

JR三ノ宮駅に集合し、スタート地点の神戸市営地下鉄 山手線三宮駅改札出口に向かいました。

地下鉄改札出口からJR三ノ宮駅東改札を経由して、ポートライナー三宮駅、さらに、ホームまでの間、ナビレンズを体験しました。その後、ポートライナーで医療センター駅に移動して、駅から神戸アイセンターまでコード化点字ブロックの体験をしました。

ナビレンズの使い方については、NPO法人 アイ・コラボレーションの板垣さん、北山さんに説明をいただきました。また、コード化点字ブロックの使い方については、運営団体の山口さんに説明をいただきました。その後、意見交換会では、体験の感想だけでなく、運営側に質問や要望を行いました。

・Navilens:
 https://www.city.kobe.lg.jp/a47946/smartcity/108323870345.html 
・コード化点字ブロック(Youtube サンテレビニュース)
 https://sun-tv.co.jp/suntvnews/news/2022/10/29/59719/

<体験経路>

地下鉄三宮駅の券売機前で説明を聞く
地下鉄三宮駅の券売機前で説明を聞いている様子
  • ・神戸市営地下鉄 山手線三宮駅 東改札口を出た所から出発(ナビレンズ)
  • ・JR三ノ宮駅 東改札口の外の構内(ナビレンズ)
  • ・ポートライナー三宮駅(ナビレンズ)
  • ・ポートライナー医療センター駅(コード化点字ブロック)
  • ・神戸アイセンター(コード化点字ブロック、ナビレンズ)

3 意見交換会

3-1 システム・アプリの使い方

  • ・ナビレンズのコードを検知するが、ボイスオーバーがメッセージを読み上げないことがあった。(後に、全てのiPhoneではなく、特定のiPhoneでこの不具合が発生していることがわかった。)
  •  ボイスオーバーをオフにすると、ナビレンズの音声で読み上げるので、ボイスオーバーをオフにしてはどうかという提案があった。一方、ボイスオーバーをオンにして、スワイプをするなど読み上げの工夫をしてはどうかという意見もあった。
  • ・アイホンのバッテリーの消耗が激しい。コード化点字ブロックの場合は、警告ブロックにマーカーが設置されているので、検知し、読み上げる時以外はスリープにしておくとよい。ナビレンズの場合、ルート案内の時は、その間、ルート上にアイホンをかざしておかないと行けない。
  •  なお、バッテリーが少なったユーザーは、アイ・コラボレーションさんが会議室に準備していただいた充電器をお借した。感謝感激しました。
  • ・トイレの前のコード化点字ブロックは、トイレの内部の状況を詳しく説明してくれるので、トイレ使用時には大変役立つと思う。
  • ・屋根がない屋外でも利用できる。また、雨の日も利用できるが、雪が積もれば使用できない。夜はある程度の明るさで認識する。
  • ・地下鉄では、壁にナビレンズを貼ると、乗客から盗撮との苦情がくる恐れがある。一般の人にもナビレンズのことを知ってほしい。
  • ・晴眼者に、見えないってことがどんなことなのか理解をしてほしい。

3-2 導入に向けて

ポートライナー医療センター駅で体験
ポートライナー医療センター駅で体験している様子
  • ・使いやすいと思われるトイレのメッセージは、当事者を交えて何度も検討を行った。導入時には当事者が参画し、メッセージについて十分な検討することが重要である。
  • ・姫路市総合福祉会館をナビレンズの練習場にしたい。ナビレンズでは、パブリックコードの無料使用を認めているので、福祉会館であればそれが利用できる。
  • ・コード化点字ブロックは、パーソナルユースやパブリックコードの制度がなく、商業的な利用が可能である。5年間のメンテナンス付きで1箇所7万円程度である。(*ナビレンズはコード化点字ブロックの10倍の使用料と思われる)
  • ・導入にはコストの面が気になる。どうしても利用者が少ないと利用者一人あたりのコストが高くなるので、高齢者や聴覚障がい者、観光客など多くの人が利用できるように工夫するのも良いかもしれない。ナビレンズでは、手話の案内や35言語の案内が準備されている。
  • ・導入には多額の費用が必要であるが、クラウドファンディングを利用しているところもある。
  • ・明石市役所が改築の時期になっているので、ぜひ、売り込んでほしい。
  • ・建築事務所などは歩行支援システムに関心があるようだが、国土交通省からは歩行支援システム導入の指示はしない。中山記念館や盲学校には導入の提案を行ったが、導入には消極的であった。

3-3 歩行支援システムの応用分野

近くの会議室での意見交換会の様子
近くの会議室での意見交換会の様子
  • ・自動販売機にも、ナビレンズのマーカーが貼ってあり、それを読み上げると、お金の入れ方や、商品の位置と名前を丁寧に読み上げてくれた。実際には買わなかったが一人でも使えそうな感じがした。
  • ・お店の入り口やトイレの流し方、ホテルの設備の案内にもナビレンスを導入してほしいという意見がある。
  • ・駅のホームの転落防止に役立ててほしい。現在、その方策について検討している。
  • ・現在、海外においてシャンプーやコカコーラ、洗剤などの商品にナビレンズが付けられている。買い物時や使用時に役立つよう、製品の製造者が自主的にナビレンスのマーカーをつけてくれると良いのだが。
  • ・自宅での利用を考えている。マンションの入り口やオートロックのドアなどに利用したい。自宅の近辺でも利用したい場所はあるが、許可を得なければならない。
  • ・自宅周り・通勤路・コンビニスーパーへの道案内など個人の用途は、多くの人が利用する公共の場の歩行支援システムとは別に考える必要がある。自宅周りには、GPSを使った歩行補助アプリが使えそうである。
  • ・田舎では、白線のない道もあるので、このような新しい技術を使用したい。
  • ・ナビレクを体験したが、警告ブロックのかなり手前で案内があり、わかりにくかったので、練習が必要と思った。
  • ・近くリリースされるアイナビという歩行補助アプリは、相当に優秀である。GPS精度を画像の認識などでGPSの精度を高めている。

takahiro93

視覚障害者のICT応援団をしています。 パソコンやiPhoneは、視覚障害者にとって日常生活ツールとなっています。しかし、視覚障害者が操作できない部分があるウェブやアプリがまだまだ多くあります。また、視覚障害者の8割近くが、パソコンやスマフォをまだ活用していないと言われています。このような問題の解決に努力したいと思っています。

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